AAMTジャーナル「機械翻訳」No. 83 「KOTOBAL」「MELON」 × 透明ディスプレイによる 多言語コミュニケーションの社会実装
要旨
本稿は、コニカミノルタが提供する多言語通訳サービス「KOTOBAL」「MELON」と透明ディスプレイ連携技術を、社会現場に導入した取り組みを紹介する。特に、ホテル業界および公共施設での実装事例を通じて、現場で得られた背景、効果を整理し、「翻訳技術がどのように現場で活用されているか」を伝えたい。
1. はじめに
訪日外国人と在留外国人の増加に伴い、観光・公共の現場では多言語対応の重要性が高まっている。一方、翻訳機では、操作の煩雑さや会話の不自然さといった課題が指摘されてきた。こうした課題を克服し、より自然で直感的なコミュニケーションを可能にするため、当社は「KOTOBAL」「MELON」に透明ディスプレイを組み合わせたシステムの社会実装を推進してきた。本稿では、相鉄ホテルマネジメントと東京都公共施設での導入事例を紹介する。
2. 「KOTOBAL」「MELON」 と透明ディスプレイ技術の特徴
2.1. 多言語通訳サービスの概要
当社は2016年、医療現場における外国人患者対応の課題に応えるため医療機関向け多言語通訳サービス「MELON」を開発した。AI通訳と人による遠隔通訳を一つのアプリで使い分けられる仕組みを整え、専門用語にも対応可能な環境を提供してきた。その後、自治体など多業種からの要望を受け、2020年には「KOTOBAL」を展開。現在では100を超える自治体に導入され、公共窓口や医療機関、ホテルの現場で「誰一人取り残さない窓口」の実現を支援している。
「MELON」「KOTOBAL」の特長はAI による機械通訳と遠隔オペレーション通訳(ビデオ通訳)をハイブリッドで利用可能な点にある。対応言語は最大 32 カ国語で、タブレット 1 台で AI 通訳・ビデオ通訳を使えるよう設計されている。
機械通訳では簡易な対話を迅速に処理し、ビデオ通訳では専門性の高い相談などに対応する構成としている。

2.2. 透明ディスプレイとの連携
しかし、既存の翻訳機やタブレットは、利用者が端末に向かって発話し、機器を受け渡す必要があるなど、会話が不自然になりやすい課題を抱えていた。そこで当社は、会話内容をリアルタイムに文字化して透明ディスプレイ上に表示するシステムを開発。利用者とスタッフが視線を合わせながら会話でき、映画の字幕のように自然なやり取りが可能となった。

3. 導入事例①:相鉄ホテルマネジメント
3.1. 導入の背景と目的
株式会社相鉄ホテルマネジメントでは、コロナ禍の収束に伴い急速に回復したインバウンド需要に対応するため、2025年1月より全国51ホテルのフロントに「KOTOBAL」を導入した。背景には、外国人宿泊客の増加と人手不足という業界全体の課題があり、語学に堪能なスタッフばかりではない状況で、多言語対応力を強化しつつスタッフが安心して接客できる環境を整える必要があった。
3.2. 導入効果・利用者反応
導入後のフィードバックから、次のような成果が報告されている:
– 翻訳結果がリアルタイムに表示されるため、近くにいる別のスタッフも内容を把握でき、その場でフォローに入れるようになった。これにより、属人的になりがちな外国語対応がチーム全体で支えられる仕組みに変わった。
– 語学に不安を持つスタッフにとっても安心材料となり、「これがあるだけで落ち着いて接客できるようになった」という声が多く寄せられている。採用面でも「語学に自信がなくても接客に挑戦できる」と感じる人材が増えている。
– お客様からも変化が見られ、導入前に多く寄せられた「英語を話せるスタッフがいない」といった口コミはほとんど見られなくなった。
4. 導入事例②:東京都公共施設
東京都では、誰もが安心して利用できる窓口環境の整備を目的に、2024年6月より都有施設38か所に「KOTOBAL」と透明ディスプレイを導入した。これは、インクルーシブな都市づくりを進める東京都のデジタル活用施策の一環であり、外国人や聴覚障がい者を含む多様な利用者との円滑なコミュニケーションを実現するものである。
5. 今後の展望
相鉄ホテルマネジメントと東京都公共施設という、観光と公共サービスの双方における導入事例は、KOTOBALと透明ディスプレイが多様な利用者との自然なコミュニケーションを実現できることを示している。これらは「観光 × 公共インフラ」に共通する課題を解決しうる取り組みであり、今後、様々な場面でサービスを展開していきたい。
謝辞
本取組を進めるにあたり、KOTOBALやMELONを利用する顧客全般、ならびにサービスを共に支えるアライアンスパートナーに深く感謝する。寄せられた意見や要望は、サービス改善と社会実装を推進する大きな力となった。ここに改めて謝意を表する。