ご挨拶

会長メッセージ

このたび、隅田英一郎前会長から重責となるバトンを引き継ぎ、まことに微力ではありますが、当協会のさらなる発展のために尽力したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

自己紹介しますと、自然言語処理分野、特に機械翻訳システム(MT)の研究・開発に総合電機メーカーで10年、その後、大学に籍を移し、教育・研究に10年、その後、現在の翻訳会社に籍を移し、MTを利活用する立ち位置で20年と計40年以上に亘りこの分野に携わってきました。この間に、翻訳・通訳業界の歴史ある業界団体である日本翻訳連盟(JTF)の会長を拝命しておりました。当協会の創立者である故長尾真京都大学名誉教授にご指導頂く機会に恵まれたことが、当分野に関わる端緒といえます。実用的日英機械翻訳システムを研究開発する科学技術庁Muプロジェクト。日本を代表する計算機メーカー、翻訳会社等から若手の研究者・技術者を集め、次代を担うであろう人財を教育する一面もありました。隅田前会長をはじめ、現在、各界において指導的立場で日本のAI(人工知能)分野を牽引している方々との出会いが、京都大学であり、現在の自分を成長させるきっかけとなった財産といえます。

長尾先生は当初から、機械翻訳は決して人間が行う翻訳と対立するものではなく、双方がうまく協創・協力してより良い翻訳を世の中に提供し、世界平和に貢献していくべきものとおっしゃっていました。

ニューラル機械翻訳方式になって機械翻訳の翻訳精度は飛躍的に向上しつつあります。
すなわち、従来のMT開発と利用に関する常識が常識でなくなり、新たな常識が次々に誕生しています。例えば、今年の長尾賞は国立情報学研究所の黒橋禎夫所長の呼びかけのもと、オープンかつ日本語に強い大規模言語モデル(LLM)を構築し、その原理解明に取り組むことを目的として発足したチームが受賞しました。新たな常識が誕生するものと期待しています。

一方、機械翻訳は翻訳の品質保証を行うわけではなく、ISO規格でも翻訳の品質保証は人間にゆだねられています。文化の異なる他国の人々に単なる「ことば」や「こと」の翻訳から、伝えるべき「こころ」を正しく自然に翻訳するように努めることが肝要であり、先人の思い、理念をDNAとして引き継ぎ、気持ちも新たに前に進む原動力として行きたいと思います。

流れる時代と広大な空間はそこにある さぁ、走りだそう!

AAMT会長 安達 久博


Last Update : 11 Jul. 2024

Translate »