AAMT長尾賞 学生奨励賞

第10回AAMT長尾賞学生奨励賞の推薦募集(〆切:2023年4月7日)を開始しました。皆様の推薦をお待ちしております。

第10回AAMT長尾賞学生奨励賞の推薦の案内(推薦書ダウンロード)

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AAMT長尾賞学生奨励賞

一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT)の初代会長の長尾真先生が日本国際賞を受賞されましたが、同賞の賞金の一部をAAMT の活動に資するようにとAAMT にご寄付くださいました。AAMT 長尾賞学生奨励賞は機械翻訳の発展に長年取り組んでこられた長尾真先生の機械翻訳への熱い思いを、次世代を担う学生諸君に伝え、将来の機械翻訳の発展に資する研究を見出し、もって学生諸君の奮起を促すことを趣旨として、長尾真先生から頂いた寄付を原資として運営する賞を新設いたします。

賞の趣旨

機械翻訳研究に携わる優秀な研究者と判断される学生を表彰します。

AAMT長尾賞学生奨励賞規約

第10回(2023年)受賞者

受賞者1

趙 宇婷 (Yuting Zhao)
東京都立大学 システムデザイン研究科(現在:九州大学大学院 システム情報科学研究院)

受賞対象論文

“Multimodal Neural Machine Translation based on Image-Text Semantic Correspondence”
東京都立大学 小町守教授の指導のもとに、2022年度 東京都立大学の博士論文としてまとめられたものである。

本論文は、機械翻訳の入力として画像情報を利用する「マルチモーダル機械翻訳」に取り組んだ博士論文である。そのための方法として領域への注視に基づく手法と、入力文の単語と画像領域のアラインメントに基づく手法の二つを提案し、それぞれ有効性を示している。特に後者のアプローチはテキストと画像という異なるモダリティを融合し翻訳に有用な画像情報を得る新規性の高いアプローチであり、マルチモーダル機械翻訳の新たな可能性を示したと言える。以上の理由から、本論文は長尾賞学生奨励賞にふさわしいものと考える。

受賞者2

平岡 達也 (Tatsuya Hiraoka)
東京工業大学 情報理工学院(現在:富士通株式会社)

受賞対象論文

“Task-Oriented Word Segmentation”
東京工業大学 岡崎直観教授の指導のもとに、2021年度 東京工業大学の博士論文としてまとめられたものである。

受賞理由

本論文は、機械翻訳を含む後段タスクに合わせた単語分割の最適化に取り組んだ博士論文である。単語分割は自然言語処理における重要な基盤技術であるが、本研究では後段タスクとの同時学習によってよりタスクに適した単語分割モデルを得るための手法を提案し、文書分類や機械翻訳における有効性を検証している。機械翻訳に特化した研究ではないものの、広く自然言語処理の性能向上に資する重要な研究であると言える。以上の理由から、本論文は長尾賞学生奨励賞にふさわしいものと考える。

長尾賞学生奨励賞受賞者1
東京都立大学 システムデザイン研究科(現在:九州大学大学院 システム情報科学研究院)
趙 宇婷 (Yuting Zhao)さん
長尾賞学生奨励賞受賞者2
東京工業大学 情報理工学院(現在:富士通株式会社)
平岡 達也 (Tatsuya Hiraoka)さん

第9回(2022年)受賞者

受賞者1

東北大学大学院情報科学研究科 森下睦さん(現 NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

受賞対象論文

東北大学 鈴木潤教授の指導のもとに、2021年度東北大学の博士論文としてまとめられたものである。
「Expanding the Applicability of Machine Translation」

受賞理由

本論文は、現代の機械翻訳において重要な大規模対訳コーパスの構築と、特定ドメインへの適応を中心に、機械翻訳の実用的課題に取り組んだ博士論文である。Webクローリングによって2000万文超の日英対訳コーパスJParaCrawlを構築・公開したことは大きな貢献である。WMT2020、WMT2021においても同コーパスを利用したタスクをオーガナイズしその有用性を実証している。また、機械翻訳のドメイン適応について、クラウドソーシングの活用という新たな試みにより全自動では困難であった精度向上を実現している。以上の理由から本論文は長尾賞学生奨励賞にふさわしいものと考える。

(2022年度は、COVID-19感染症の影響で授賞式をオンライン形式で行いました。写真をクリックすると拡大されます。)

森下様

受賞者2

東京工業大学情報理工学院 美野秀弥さん(現 NHK放送技術研究所)

受賞対象論文

東京工業大学 徳永健伸教授の指導のもとに、2021年度東京工業大学の博士論文としてまとめられたものである。
「学習時と推論時における入力データの特徴の違いを考慮したニューラル機械翻訳モデルの学習手法」

受賞理由

本論文は、機械翻訳におけるドメイン適応と文脈利用に関する研究をまとめた博士論文である。機械翻訳のドメイン適応について、ドメインを表現する詳細なタグを設計・利用する方式を提案し、実験により実用性・有効性を示している。また、文脈利用について、従来原言語側の文脈を与える方法が一般的であったのに対して、露出バイアスを考慮した学習方法により目的言語側の文脈利用も有効であることを示している。本論文は、いずれの実験も網羅的に実施されており、実験結果の信頼性も高い。以上の理由から本論文は長尾賞学生奨励賞にふさわしいものと考える。

(2022年度は、COVID-19感染症の影響で授賞式をオンライン形式で行いました。写真をクリックすると拡大されます。)

美野さん

第8回(2021年)受賞者

受賞者

東京大学大学院情報理工学系研究科 石渡 祥之佑さん(現 Mantra株式会社)

受賞対象論文

東京大学 喜連川優教授の指導のもとに、2018年度東京大学の博士論文として まとめられたものである。
「Translation and Description Methods for Multilingual Text Understanding」

受賞理由

本論文は、人間の多言語テキスト理解における課題を言語の違いとドメインの 違いから整理し、いくつかの新規性のある手法を提案した博士論文である。まず、機械翻訳のドメイン適用において重要な未知語の扱いについて、単語ベクトル空間の写像学習に基づく未知語処理を提案している。また、RNNベースのニューラル翻訳に文節情報を取り込む手法を提案し、その有効性を示している。さらに、局所的・大局的な文脈に応じて語句の語義を生成する手法を提案している。いずれも挑戦的な課題に対する有用な手法であり、将来の機械翻訳の進展への寄与も大いに期待できる。以上の理由から本論文は長尾賞学生奨励賞にふさわしいものと考える。

(2021年度は、COVID-19感染症の影響で授賞式を中止しました。写真をクリックすると拡大されます。)

石渡 祥之佑さん写真

第7回(2020年)受賞者

受賞者1

筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻 龍梓さん(現)深圳技術大学

受賞対象論文

「フレーズ・トークン込みNMTモデル及びSMTによる大語彙フレーズ翻訳によるハイブリッド翻訳方式」,龍梓・木村龍一郎・飯田頌平・宇津呂武仁・三橋朋晴・山本幹雄,電子情報通信学会論文誌, Vol.J102-D, No.3 (2019年3月), pp.104-117(学生論文特集秀逸論文)

受賞理由

ニューラル機械翻訳(NMT)は従来の統計機械翻訳(SMT)に比べ非常に高い翻訳精度を実現するが、大規模語彙を扱うことが難しく、語彙制限による未知語問題が知られている。未知語問題を解決する従来手法は存在するが、いずれも単語や部分単語に対する未知語処理であり、複合語を含むフレーズには対応してこなかった。本論文は、NMTにおける未知語の問題に対して、SMTのフレーズ間対応を用いることでフレーズ対応の未知語処理を行う手法を提案したものである。特許翻訳を対象とした実験において、従来の未知語処理手法よりも高い翻訳精度を実現し、さらに訳抜けを約30%低減できることを報告しており、実用性・有用性の高い手法であると考えられる。以上の理由から、長尾賞学生奨励賞にふさわしい研究内容と判断した。

受賞者2

東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻 Raphael Shu(朱中元)さん

受賞対象論文

東京大学 中山英樹准教授の指導のもとに、2019年度東京大学の博士論文としてまとめられたものである。
「Structure-Aware Latent-Variable Models for Neural Machine Translation」

受賞理由

本論文は、連続的な潜在変数を用いた変分オートエンコーダに基づく非自己回帰的機械翻訳、離散的な量子化に深層学習を用いた単語分散表現の圧縮、構文・意味的な特徴の離散的な符号化に基づく多様な訳文生成という3つの研究内容について「構造を考慮する潜在変数モデル」を主題としてまとめた博士論文である。それぞれの研究は、ニューラル機械翻訳の高速化、軽量化、文体制御に関する独創的かつ有用性の高い手法を提案しており、これまでに自然言語処理および人工知能分野の難関国際会議に採択されて学術的に高い評価を得るとともに、今後の実用的な発展が大いに期待できる。以上の理由から、長尾賞学生奨励賞にふさわしい研究内容と判断した。

受賞者のみなさま

(2020年度は、COVID-19感染症の影響で授賞式を中止しました。写真をクリックすると拡大されます。)

長尾賞学生奨励賞受賞者1
筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻 龍梓さん(現)深圳技術大学
長尾賞学生奨励賞受賞者2
東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻 Raphael Shu(朱中元)さん

第6回(2019年)受賞者

受賞者

東京大学大学院工学系研究科 江里口瑛子さん(現 Microsoft Corporation)

受賞対象論文

東京大学 鶴岡慶雅教授の指導のもとに、2017年度東京大学の博士論文としてまとめられたものである。
「Incorporating Syntactic Structure into Neural Machine Translation」

受賞理由

本論文は、ニューラル機械翻訳(NMT)において構文情報を利用する二つの方法を 提案している。1つ目の方法は、原言語側においてtree LSTMを用いて句構造の情報を符号化する方法であり,2つ目の方法は、目的言語側において shift-reduce法に基づく依存構造解析と自己再帰的な言語生成を同時に進行させる方法である。特に後者は新規性が高く、10万文対程度の小規模な対訳データではあるが提案手法の有効性が検証されている。現在のNMT研究の主流は構文解析を使用しない方向に進んでいるが、人間に翻訳結果を説明する必要がある用途では提案手法は依然として有効であると考えられる。また、自然言語処理全般において、sequentialなモデルがよいか構造的なモデルがよいかは様々に議論されており、NMTにおける構文情報の有効性を示した本論文はこの議論を深めることにも貢献している。以上の理由から本論文は長尾賞学生奨励賞にふさわしいものと考える。

第5回(2018年)受賞者

受賞者

小田悠介
奈良先端科学技術大学院大学(現グーグル合同会社)

受賞対象論文

「二値符号予測と誤り訂正を用いたニューラル翻訳モデル, 小田悠介・Philip Arthur・Graham Neubig・吉野幸一郎・中村哲, 自然言語処理 第25巻2号 (2018年3月) pp.167-199.」(ジャーナル論文)

受賞理由

本論文は、ニューラル翻訳モデルのデコーダの出力層において、単語出力確率の計算量を従来法の対数程度まで削減する方法を提案している。提案法は、従来のソフトマックスによる単語出力確率の計算の代わりに、各単語に対応付けられたビット列を予測することにより単語出力確率を求める。提案法は、単体で使用した場合には翻訳精度の低下を招くので、本論文ではさらに、提案法と従来法との混合モデルや、二値符号に対する誤り訂正手法を提案法に適用する方法を提案し、実験により、CPUを用いたデコーディングにおいて、精度の低下を防ぎつつ、最大10分の1程度までの計算量を削減できることを示した。本論文は、非常に独創的かつ実用性が高い研究成果の報告であり、AAMT長尾学生奨励賞にふさわしいと考える。

授賞式の様子(小田さんと中岩前AAMT会長)

(写真をクリックすると拡大されます)

第4回(2017年)受賞者

受賞者

京都大学大学院情報学研究科 John Richardsonさん(現Google)

受賞対象論文

京都大学 黒橋禎夫教授の指導のもとに、2017年度京都大学の博士論文としてまとめられたものである。
「Improving Statistical Machine Translation with Target-Side Dependency Synta」

受賞理由

本論文は、木構造から木構造への変換に基づく翻訳 (Tree-to-Tree translation, T2T) において、目的言語の依存構造の情報を用いて、依存構造木言語モデルによる翻訳候補のリランキングや、英語の副詞のような挿入位置の自由度が大きい要素の挿入位置を決定する方法を提案し、複数の言語対において翻訳精度を改善できることを示した。また翻訳候補のリランキングや自由度が高い要素の位置決めの問題にRNN言語モデル(Recurrent Neural Networklanguage model)を用いることにより翻訳精度をさらに改善できることを示した。本研究の成果はKyotoEBMTとして公開されている。
このように本論文は、木構造から木構造への変換に基づく翻訳および用例翻訳(Example-Based Machine Translation, EBMT)に関する長年の研究の到達点を示し、かつ、ニューラル機械翻訳の技術を取り入れたT2T/EBMTの新しい研究の方向性を示す優れた論文であり、AAMT長尾学生奨励賞にふさわしいと考える。

長尾賞学生奨励賞受賞者講演の様子(John Richardson さん)

(写真をクリックすると拡大されます)

第3回(2016年)受賞者

受賞者

奈良先端科学技術大学院大学・博士後期課程 三浦明波さん(みうら あきば)

受賞対象論文

Graham Neubig(ニュービック)先生の指導のもとに、2016年度奈良先端科学技術大学院大学の修士論文としてまとめられたものである。
「中間言語モデルを用いた多言語機械翻訳の精度向上」

受賞理由

本論文は、翻訳対象となる言語対に十分な量の対訳データが得られない場合に、第三の言語を中間言語として利用するピボット翻訳の新しい実現法を提案し、翻訳精度を大きく改善できることを示した。提案法は、今後、英語を介した日本語とアジア言語の翻訳のような語順が大きく異なる言語対への適用が期待できるなど、ピボット翻訳に関する新しい研究の方向性と今後の発展の可能性を示す優れた論文であり、AAMT長尾学生奨励賞にふさわしいと考える。

授賞式の様子

(写真をクリックすると拡大されます)

第2回(2015年)受賞者

受賞者

京都大学大学院情報学研究科 後藤功雄(ごとう いさお)さん(現在NHK放送技術研究所)

受賞対象論文

黒橋 禎夫先生の指導のもとに、2014年度京都大学大学院情報学研究科博士論文としてまとめられた論文。
「Word Reordering for Statistical Machine Translation via Modeling Structural Differences between Languages」

受賞理由

本論文では、日本語と英語のように語順が大きく異なる言語対における統計的機械翻訳において、語順変換の精度を向上するための3つの手法を提案し、特許対訳データを対象とする日本語から英語および中国語から英語への大規模な翻訳実験によりその有効性を確認している。第一の方法は、句に基づく翻訳において原言語の構文構造を考慮した識別的な並べ替えモデルを実現する方法であり、構文解析器を使わずに翻訳精度を改善できる点が優れている。第二の方法は、主辞後置言語から他言語への事後並べ替え翻訳へITG構文解析を応用するという斬新な発想が優れている。第三の手法は、目的言語の構文解析器を用いて目的言語の構文構造を原言語へ射影することにより原言語の構文解析器を構成し、高精度な事前並べ替え翻訳を実現する方法であり、英語のような高精度な構文解析器が利用可能な言語への翻訳に関して原言語を問わず幅広く適用可能な点が優れている。このように本論文は統計翻訳における語順変換に関して実証的に深く探求した優れた研究であり、AAMT長尾学生奨励賞にふさわしいと考える。

授賞式の様子

(写真をクリックすると拡大されます)

第1回(2014年)受賞者

受賞者

東京大学 大学院教育学研究科・博士課程1年 宮田 玲さん

受賞対象論文

影浦峡先生の指導のもとに、2013年度東京大学大学院研究科修士論文としてまとめられた以下の論文が受賞対象論文である。
「自治体ウェブサイト文書の多言語化を支援する枠組みとシステム環境の研究」

受賞理由

本論文では、自治体の手続き型文書を対象として、機械翻訳技術を活用した多言語翻訳に必要な制限言語ルールやオーサリング環境を提案している。制限言語とその機械翻訳への効果を検証する研究は多いが、本論文は図書館情報学的な立場から文書構造や文書の作成過程にまで踏み込んだ独自の方法論を提示している点が高く評価できる。
本論文は、機械翻訳に関連する新しいシステムやサービスに関する、
理論的かつ実証的な優れた研究報告であり、AAMT長尾学生奨励賞にふさわしいと考える。

授賞式の様子(写真をクリックすると拡大されます)


(2023年07月13日現在)

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