2017年長尾賞を受賞したヤラクゼンのその後とこれから
坂西優
八楽株式会社
1. 受賞後のヤラクゼン
オンライン翻訳プラットフォーム「ヤラクゼン」は、シンプルな画面のオンライン翻訳ツールである。MSワードやエクセル、PDFなどの各種ファイルをそのままドラッグ&ドロップして、複数の翻訳エンジンから最適なものを選び、機械翻訳にかけることができる。また、機械翻訳後は翻訳文の修正や文書共有、翻訳発注などのコラボレーション機能も利用できるのが特徴である。その使いやすいUI/UXと、その品質、スピードが評価されて延べ1,000社以上に導入されている。
「ヤラクゼン」は2017年、名誉ある長尾賞を頂いた。その際には、多くの翻訳関係者から祝福の声をいただき、ヤラクゼンの認知が向上し、結果、問い合わせが増加したように思われる。
その後、ニューラル機械翻訳のブレイクスルーの恩恵もあって、ヤラクゼンはファイル対応の拡充やセキュリティの強化、用語対応などの機能を強化し、結果、多くのユーザーを獲得することができた。また、ニューラルの出現時には、NICTの内山将夫先生にも様々なアドバイスを頂いた。
近年では、機械翻訳を効果的に活用するための「プリエディット」と「ポストエディット」のコツをまとめた著書「自動翻訳大全」をリリース。一時期は、アマゾンの「ビジネス英語一般カテゴリー」にてベストセラーになるなど好評をいただいた。
また、音声翻訳にも挑戦しており、ヤラクゼンに音声認識機能を追加したハードウェア「ヤラクスティック(β)」をリリースした。ヤラクスティック(β)は、6つのマイクを搭載し、筐体の周囲3メートルの音声のみを抽出、その後、音声認識、(ヤラクゼンによる)機械翻訳、文毎に表示する仕組みである。従来の音声翻訳機のように一文ずつ翻訳→発話するものではなく、筐体を手元に置いておくと、流れる会話を途切れることなく翻訳、字幕のようにテキスト表示するのが大きな特徴となっている。機械翻訳にはヤラクゼンを利用するため、それまでに蓄積した翻訳メモリ(フレーズ)や用語が反映されるようになっている。
2. ヤラクゼンのこれから
引き続き、世界で最も使いやすいCATツールを目指して、開発を続けていく。そのために、品質向上に注力しながらもモバイル対応やQA機能、コラボレーション機能などを拡充していく。
そして、機械翻訳と人の協業によるAugmented Translation(拡張翻訳)の世界を追求していきたい。